妊活に葉酸の摂取が推奨されているのはなぜなのか?
妊活中や妊娠中、産後の授乳期まで女性が積極的に摂取することが望ましいと言われる葉酸。
厚生労働省が摂取を推奨していることからも、妊娠を考える女性であれば知らない人はいない栄養素なのではないでしょうか。
そんな大切な栄養成分である葉酸について、より詳しく見てみましょう。
目次
そもそも葉酸とは?
葉酸はビタミンの一種で、ほうれん草から発見されたことから、ラテン語のほうれん草folic からその名がつきました。
葉酸は鉄分やビタミンB12と一緒に赤血球を作るために働いたり、新しい細胞を作るときに正常な細胞分裂が行われるように手助けをする働きがある重要な成分です。
貧血の予防や改善、生理不順や生理痛の改善、眼精疲労や肩こりの予防や軽減、美肌や美髪、ダイエットにも効果を発揮すると言われています。
また高血圧や動脈硬化、認知症やがんのリスクも減らすと言われる、私たちの体にとってとても大切な栄養素なのです。
ですから本来は誰でも葉酸を摂らなければならないのですが、特に妊娠前や妊娠中の女性は通常よりも多くの葉酸が必要となるため、サプリメントからの接収が推奨されているのです。
なぜ葉酸は妊活中から飲むことが必要なの?
妊娠を望む女性なら、妊娠する前から葉酸を摂取することが大切と言われていますが、理由や根拠はどこにあるのでしょう?
妊活をサポートする
葉酸は造血ビタミンとも呼ばれ、血液を増やし血行を良くする働きをします。
その結果、子宮の血行も良くなって子宮内膜が厚く強くなり、受精卵が着床しやすい状態に整えられていきます。
また着床した受精卵は細胞分裂を繰り返して成長していきますが、この時期は受精卵がどんどん母体から葉酸を取り込みますので、より多くの葉酸が必要となります。
受精卵が取り込んだ葉酸は、正常な細胞分裂をサポートして受精卵の成長を助けます。
葉酸が十分に足りている妊婦さんでは、化学流産が起こりにくくなると言われています。
神経管閉鎖障害のリスクを減らす
妊娠超初期と言われる妊娠3週目から5週目くらいは、赤ちゃんの細胞分裂が盛んに行われている時期です。
この時期に母体の葉酸が欠乏していると、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクが上がることがわかっています。
神経管閉鎖障害とは、無脳症、二分脊椎症の先天性疾患のことで、10,000件の分娩に6件の発症率とされています。
日本二分脊椎症協会では、二分脊椎が発症する原因の一つとして、葉酸が不足することで妊娠3週頃に神経管がうまく形成されないことを指摘しています。
反対にこの時期にしっかりと葉酸が足りていれば、神経管閉鎖障害が起こりにくくなることが報告されているのです。
参照:http://sba.jpn.com/spinabifida
無脳症とは?
無脳症は生命を維持する大元となる大脳がうまく成長しない病気で、死産となるか生まれても1週間ほどで亡くなってしまうことが極めて多い深刻な障害です。
二分脊椎症とは?
脊髄が飛び出たり、亀裂したようになる顕在性と、皮膚に火傷のような跡がついたりおしりに歪みが出る潜在性の2種類があります。
ADHDや知能障害を持つ可能性があり、幼児期には下半身の運動障害や排泄障害がおこることもある疾患です。
ダウン症を予防する
DNAの異常や突然変異によって起こるとされているダウン症は、高齢出産や野菜不足の人から生まれる可能性が高いということがわかっています。
DNAでの合成に欠かせない葉酸の摂取が十分であれば、ダウン症のリスクが大幅に減るという研究結果があります。
葉酸を摂取するのは女性だけでいい?
妊娠前から女性が摂ることが推奨されていますが、実はパートナーである男性も一緒に葉酸を摂ることが望ましいと言われています。
WHO(世界保健機関)の調査によると、不妊に悩むカップルのうち約半数が、男性側に原因があって妊娠できないという結果が出ているのだそうです。
しかし男性と女性双方が葉酸を摂取しているカップルでは、妊娠の確率が高くなることもわかっています。
葉酸は男性の精子の成長を助け、精子の細胞分裂が正常に行われるようサポートして、染色体異常などの先天性障害を防ぎ、胎児の奇形のリスクを減らすという研究結果も出ています。
一般的に女性は妊娠する1ヶ月前からの葉酸の摂取が勧められていますが、男性は少なくとも3ヶ月前からは摂り始める必要があると言われています。
葉酸の摂取量は?どんな食品から摂れる?
厚生労働省が推奨する葉酸の1日当たりの摂取量は以下の通りです。
・通常の成人男女 240マイクログラム
・妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月の女性 240+栄養補助食品から400マイクログラム
・妊娠4ヶ月目から 240+栄養補助食品から240マイクログラム
・授乳期 240+栄養補助食品から100マイクログラム
葉酸を多く含む食品は
野菜ではほうれんそう、ブロッコリー、アスパラガス、かぼちゃ、白菜、モロヘイヤ、枝豆など
果物ではバナナやいちご、みかん、キウィ、アボカド
きのこ類ではエリンギやえのき、舞茸などがあります。
また納豆やレバーペースト、たたみいわし、焼海苔などにも含まれています。
バランスの良い食生活を送っていれば摂取できるとも言えるのですが、葉酸は水や熱に弱いため、調理の途中で半分近くが失われてしまいます。
また食材の種類や食べ合わせ、食べる量などに摂取量が大きく左右されるため、特に妊活中や妊娠中の女性はサプリメントから摂る必要があるとされています。
効率よく葉酸を摂るには?
葉酸は大きくはポリグルタミン酸型と、モノグルタミン酸型の2つの種類に分けられます。
ポリグルタミン酸型は食品に含まれる天然葉酸で、モノグルタミン酸型は合成葉酸です。
一見すると体には食品から摂れる天然葉酸のポリグルタミン酸型の方が良いように思いますが、葉酸の場合は違います。
ポリグルタミン酸型の葉酸は体に吸収されにくく、摂った量の半分程度しか吸収されません。
それに比べてモノグルタミン酸型は、摂取したうちの85パーセント程度が葉酸として吸収されると言われます。
吸収効率の良さから、妊活中や妊娠中の葉酸の摂取はサプリメントから摂るようにと推奨されているのです。
厚生労働省の情報提供サイト、eーヘルスネットにも、諸外国でも日本においても神経管閉鎖障害のリスク低減の観点から、食事から加えて栄養補助食品からの葉酸を摂るよう勧告されています、との記述があります。
参照:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-002.html
葉酸はたくさん摂ったほうがいいの?
葉酸は大切な栄養素ですが、1日の摂取上限量は1,000マイクログラムまでと厚生労働省で定められています。
葉酸の過剰摂取は葉酸過敏症を引き起こして、呼吸障害、吐き気、じんましんなどの症状がおきる可能性があることが指摘されています。
また胎内の赤ちゃんが乳児アレルギーを起こすリスクもあるということです。
葉酸は水溶性ビタミンですから、本来は体内に蓄積される心配はないのですが、サプリメントから摂るモノグルタミン酸型は吸収率が高いため、推奨されている量よりも多く摂るのは危険です。
推奨されている1日量を守って、その範囲内で摂るようにしてください。
女性だけではなく男性も摂ってほしい葉酸
胎内の赤ちゃんが最も葉酸を多く必要とするのは、妊娠3週目から5週目くらいですから、妊娠に気づいてから葉酸を摂り始めるのではすでに遅いのですね。
妊活を始めたら早めの段階で、カップル揃って葉酸のサプリメントを摂るようにしたいですね。